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ツアー・オブ・ジャパン2025 第4ステージ 美濃ステージ<レースサマリー>

⽇時:2025年5⽉21⽇(水曜⽇)
天候:晴れ32℃ 
来場者数:22,000人
ステージアンバサダー:中根英登
ホームステージチーム:愛三工業レーシングチーム

逃げ切りから値千金の大勝利! 22歳の宇田川が美濃でロードレース初勝利を掴む 

「前の3人に追いついた時、みんなキツそうな顔をしていたんです。一度遅れた僕たちの方が、まだ足が残っているかもしれないと、その時思いました。」

ツアー・オブ・ジャパン2025大会4日目はTOJ期間内でも屈指の歴史的景観を誇る「うだつの上がる街並み」をスタートする伝統の美濃ステージ。旧今井家住宅前から 4.0km のパレード区間を経て、21km の 美濃和紙の里会館前周回コースを 6 周回する総走行距離137.3kmで争われた。
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美濃ステージはいわゆる「平坦ステージ」であり、集団スプリントが想定されるステージ。総合成績を左右しかねない前日のいなべステージとは異なり、スタート直後のアタックがすんなりと決まった。3人が飛び出した後に2名が合流し、5名の逃げとなる。メンバーはアイマン・チャヒヤディ(トレンガヌサイクリングチーム)、宇田川塁(愛三工業レーシングチーム)、ヨン・クノレ(レンベ・ラド・ネット)、カーター・ベトルス(ルージャイ・インシュアランス)、風間翔眞(シマノレーシング)。
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平坦ステージの最序盤に、すんなりと決まった逃げ。定石ならスプリンターチームの思惑通りだ。あとはタイム差をコントロールしながら終盤に逃げを吸収し、集団スプリントに臨めばよい。集団の選手たちも、フィニッシュ地点の和紙の里会館に詰めかけたファンたちも、そんな「よくある展開」を受け入れた。逃げた選手たち自身も、この時は逃げ切りの可能性をどこまで信じていただろうか。
しかし大会は4日目。翌日と翌々日に山岳ステージと超級山岳が待つ。総合リーダーチームは逃げメンバーの総合成績最上位が12分6秒遅れであることを確認すると、集団牽引のペースを緩めた。総合優勝を狙うチームにとって、この日は力を使うステージではない。
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集団コントロールを担う必要のあるスプリンターチームにとっても頭が痛い展開となった。総合リーダーチームのJCL TEM UKYOにはスプリンターのアンドレア・ダマトがいるからだ。自チームの力を使ってダマトにスプリントをさせる義理はない。しかし逃げを追わなければ、集団スプリントには持ち込めない。今大会唯一の格上チームであるソリューションテック ヴィーニ・ファンティーニはエーススプリンターのラヨビッチを京都ステージで失っていることもあり、集団牽引を頼ることはできない。岡本隼と窪木一茂の2大スプリンターを擁する愛三工業は逃げに宇田川塁を送り込んでいるため、集団で静観していればいい。
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ペースの上がらない集団と逃げる5名とのタイム差はじわじわと開いていった。ワンティ・NIPPO・リユーズやシーキャッシュ X ボディラップが集団の秩序を取り戻そうと牽引にあたるが、時すでに遅し。 最終周回に入る段階で、逃げグループと集団とのタイム差は2分8秒。先頭の5名は、逃げ切りを確信する。美濃ステージは、5名のレースとなった。
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最終周回に入り何度もアタックを仕掛けたのはクノレ。しかしどれも決まらない。KOMで今度はカーターがアタック。これに対応できたのはクノレと風間のみで先頭は3名となる。しかしステージ優勝が目前となった状況で、誰も足を使いたくない。
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登坂で一度離されたチャヒヤディと宇田川だったが、懸命の追走を見せ残り2kmで追いついた。そこで冒頭の言葉に戻る。

「前の3人に追いついた時、みんなキツそうな顔をしていたんです。一度遅れた僕たちの方が、まだ足が残っているかもしれないと、その時思いました」

残り1kmを切ってトラックレースのような牽制が始まった。5名がそれぞれを見合いながら、低速でスプリント開始のタイミングを見計らう。残り300mで仕掛けたのはクノレ。しかし最終周回に彼が見せた度重なるアタックは、スプリントに持ち込みたくないという心理の表れでもあった。
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クノレの番手に入った宇田川がトップスピードで先頭に立つと、あとは誰も横に並ぶことはできなかった。宇田川の雄叫びが、板取川の河畔に響き渡った。
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「正直まだふわふわしています。フィニッシュに先頭で入ったときは、人生でこれ以上ないくらい叫びました」
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チーム新加入の22歳、宇田川にとってロードレースの初優勝は値千金のUCIレース。一度遅れを喫しても、展開を味方につければ勝つことができる、ロードレースの妙味ここにありといったステージとなった。しかしこの勝利は同時に、「スプリントには自信があるので、多少出遅れても挽回できる」と冷静に状況を見極めた宇田川にこそふさわしいものでもある。勝者には勝つだけの理由がある。
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「ニュージェネレーション」を標榜して2年目となるツアー・オブ・ジャパンにとっても、日本の新世代が飾ったフレッシュな勝利の意味は小さくない。宇田川のこの日のスプリントに、将来のビッグレースでのそれを重ねてみたくなったのは、筆者だけではないはずだ。
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劇的な逃げ切り勝利の裏で総合優勝を争う選手とチームたちは息を潜めた。とりわけすでにいなべステージで他を圧倒するチーム力を見せたJCL TEAM UKYOは、明らかに翌日以降の山岳ステージを見据えた走りをした。グリーンジャージを巡る争いの、嵐の前の静けさ。どんな嵐が吹き荒れるだろうか。
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ステージ優勝 宇田川塁(愛三工業レーシングチーム)のコメント:
「最終周回ではアタックが何度もかかり辛かったのですが、ここで止めたら後悔すると思い、なんとか踏み切りました。(KOMポイント直前の)トンネル内ではほとんど限界でしたが、小森監督が檄を飛ばしてくれて、気合を入れ直しました。スプリントには自信があったので、フィニッシュの手前で牽制が入った時に勝てるだろうと思いました。直線が長いので、早く踏み始めないように気をつけました。多少出遅れたとしても、スプリントで挽回できるだろうとも思い、残り300mから他の選手が加速したときも焦らずに番手を取り、最後にまくって勝つことができました。今までのスプリントは焦りから足を使いすぎていましたが、今日は冷静に集中して立ち回れたと思います」

個⼈総合時間賞(グリーンジャージ)・個⼈総合ポイント賞(ブルージャージ)
アレッサンドロ・ファンチェル(JCL TEAM UKYO)のコメント:
「逃げていた選手が総合成績で12分遅れだったので、チームとしては無理をして追いかける必要はありませんでした。昨日よりもイージーな一日でしたが、暑くて湿度も高く、ヨーロッパから来た身としては慣れていませんが、条件はどの選手も一緒ですので問題ありません。明日はハードなレースになるでしょうが、状況をコントールし、攻撃をすることになるでしょう。自信はあります。」

個⼈総合⼭岳賞(レッドジャージ)ニコロ・ガリッボ(JCL TEAM UKYO)のコメント:
「今日は平穏に進んだ一日でした。チームとしては総合成績が重要ですから、集団の前方には位置しましたがタイム差をコントロールすることはありませんでした。明日は厳しいステージで、ファンチェルの総合成績、そしてもしチャンスが巡ってくれば自分も勝ちを狙って走りたいと思っています。」

新人賞(ホワイトジャージ)マクサンス・プラス(ワンティ・NIPPO・リユーズ)のコメント:
「チームにはスプリント力のあるシュン(今村駿介)がいるので、集団の前をキープしていましたが、リーダーチームが逃げの選手たちを行かせたので、私たちのチームがほぼ唯一集団牽引を担いました。残念ながら追いつくことができませんでした。明日はとても厳しいステージになるでしょうし、間違いなくアクティブなレースになるはずです。総合成績が決まるのは、この先2日です」

文:小俣雄風太

第4ステージ 美濃順位
1位    宇田川塁    (愛三工業レーシングチーム)    3時間9分35秒
2位    アイマン・チャヒヤディ    (トレンガヌサイクリングチーム)    +0秒
3位    ヨン・クノレ    (レンベ・ラド・ネット)    +0秒

個⼈総合時間賞(グリーンジャージ)
1位    アレッサンドロ・ファンチェル    (JCL TEAM UKYO)    8時間51分00秒
2位    マティアス・ブレンホイ    (トレンガヌサイクリングチーム)    +16秒
3位    岡篤志    (宇都宮ブリッツェン)    +33秒

個⼈総合ポイント賞(ブルージャージ)
1位    アレッサンドロ・ファンチェル    (JCL TEAM UKYO)    40pt
2位    岡篤志    (宇都宮ブリッツェン)    36pt
3位    アンドレア・ダマト    (JCL TEAM UKYO)    33pt 

個⼈総合⼭岳賞(レッドジャージ)
1位    ニコロ・ガリッボ    (JCL TEAM UKYO)    13pt
2位    アイマン・チャヒヤディ    (トレンガヌサイクリングチーム)    10pt
3位    沢田時    (宇都宮ブリッツェン)    6pt

個⼈総合新人賞(ホワイトジャージ)
1位    マクサンス・プラス    (ワンティ・NIPPO・リユーズ)
2位    ウィリアム・ヘファナン    (シーキャッシュ X ボディラップ)
3位    ジェラルド・レデスマ・ガルシア    (VC福岡)

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