自転車はいつまで歩道を走るのか
都内の歩道を歩いていると、自転車が人混みの中をスラロームのように縦横無尽に走り抜ける姿をよく目にします。突然、後ろからかなり近い距離で抜かれると、私でさえも恐怖を感じることがあります。特に電動自転車はスピードが出やすく、下り勾配では25km/hほどで歩行者のすぐそばをすり抜けることもあり、子どもを乗せた自転車が無謀に飛ばす様子を見かけることも少なくありません。
もし歩行者がふらついたら避けられないだろうなと感じつつ、目に余る場合には注意をするようにしていますが、速度を上げたまま走り去る自転車が多いため、注意する機会も限られます。また、そもそも歩道での自転車の走行速度(走行が許された歩道に限る)は「徐行」と定義されていますが、この「徐行」が具体的にどの程度の速度を指すのか曖昧で分かりづらいため、ルール違反と断定できるケースばかりではなく、注意の根拠が薄く感じてしまうこともあります。
不思議なことに、日本人は歩行者としては信号をきちんと守るものの、自転車に乗ると急にルールを無視する傾向があるように感じます。自転車に乗ると性格が豹変するのか、それともそもそもルールを守る意識が薄い人が自転車に乗っているのか、考えさせられるところです。また、「自転車は原則車道を走行し、歩道では歩行者優先で徐行する」というルールを知らずに自転車に乗っている人も意外に多いのが現状です。
このような状況を踏まえ、私たちの団体としては、引き続き安全啓発活動を強化し、「自転車ルールの周知徹底」に努めることが私たちの役割であると感じています。危機感と当事者意識を持ち、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。
一方で、社会のルールや価値観が大きく変わるときというのは、それを理解している人とそうでない人との割合も大きく入れ替わるタイミングがあるように感じます。現時点では、自転車の走り方を注意する「じてんしゃおじさん」のほうが、むしろ「変なおじさん」として見られてしまうかもしれません。しかし、自転車先進国では、自転車が歩道を走ればすぐに誰かから注意され、車道を逆走でもしようものなら車からパッシングやクラクションを受けるのが当たり前です。
結局のところ、自転車が歩道上で歩行者を縫う様にスラローム走行するのは、ヤンチャな原付が歩道上を走る行為と類似であり、自転車の逆走も原付バイクが堂々と反対車線を走っているのとなんら変わりありません。それを社会全体がどの様に捉えているかが鍵となります。
社会全体の価値観を変えるには大きな起爆剤が必要ですが、それが2026年春に導入予定の「自転車青切符制度」になると考えています。その時になってようやく、「あの変なおじさんの言っていたことが正しかった」と感じる人が現れれば、私としても本望です。
最後に、すでに「自転車は車両である」という意識を持ち、道交法の基礎を理解している私たちサイクリストが、社会の模範となり、率先して時代を牽引していくことを願っています。