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オーバートレーニングが起こる仕組み

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近年、パワーメーターが手軽に導入できるようになり、ロードバイクのトレーニングは「数値」で管理する時代になりました。このおかげで効率的に強くなれる反面、知らず知らずのうちに身体に負荷をかけすぎてしまい、「オーバートレーニング」に陥るリスクも高まっています。今回は、オーバートレーニングが起こる仕組みを解説しつつ、いくつかの対策案もご紹介いたします。

なお、私の連載「輪生相談」でもオーバートレーニングについて基本的な解説を掲載しておりますので、参考までにリンクを貼っておきます。

1. オーバートレーニングが起こる仕組み

◯ホルモンバランスの乱れ

・コルチゾール(ストレスホルモン)の慢性的な増加
長時間かつ強度の高い運動を続けると、身体はストレスを受けていると判断し、コルチゾールを大量に分泌します。これが続くと、筋肉の合成が妨げられ、回復が遅くなります。

・テストステロンとのバランス悪化
筋肉を合成する役割のあるテストステロンに対し、コルチゾールが多すぎると回復力が低下し、パワーの維持や疲労回復が遅れます。

◯中枢性疲労(脳の疲れ)

長時間のライドやインターバルを繰り返すと、脳内の神経伝達物質(やる気・集中力に関わる物質)のバランスが崩れ、意欲低下や集中力散漫を招きます。数値を優先して無理を続けると、気づかぬうちにこの疲労が蓄積してしまいます。

◯自律神経のアンバランス

・交感神経の過剰活性
「闘争か逃走か」を司る交感神経が休む間もなく働き続けると、心拍が下がりにくく、常に緊張状態になります。

・副交感神経の抑制
休息や睡眠の際に働く副交感神経が弱まると、深いリカバリーが得られず、疲労が抜けにくくなります。

◯免疫力低下と慢性炎症

微細な筋繊維損傷や関節へのストレスが繰り返されると、身体は「常に修復モード」に入り、炎症状態が続きます。その結果、風邪をひきやすくなったり、怪我の回復が遅れたりするリスクが高まります。

2. パワーメーター時代に注意すべきポイント

・TSS(Training Stress Score)への過度な依存
数値をこなすこと自体を目的化すると、身体からの「休め」のサインを見逃しがちです。

・CTL/ATLのバランス管理不足
ATL(直近1週間の疲労度)が高くても、CTL(直近6週間のトレーニング蓄積)とのバランスが悪いと、疲労が回復しません。

・見えない疲労サインの見落とし
「睡眠の質」「気分の浮き沈み」「日常生活でのだるさ」など、数値に表れない疲労をセルフチェックしましょう。

3. すぐに始められるオーバートレーニング対策

◯ピリオダイゼーション(周期的トレーニング設計)

・三段階の負荷設計
1年(マクロサイクル)、数週間~数か月(メソサイクル)、1週間(ミクロサイクル)の三層で負荷を組み立てます。

・高強度期と休息期のメリハリ
意図的に休息期を設け、身体をしっかりリセットしましょう。

◯日々のモニタリング

・HRV(心拍変動)のチェック
朝のHRVが低いときは、トレーニング強度や時間を落とすサインと捉えます。

・主観的疲労度(RPE)や気分ログ
「今日はだるい」「やる気が出ない」と感じたら、その感覚も記録しておきましょう。

◯回復を促進する習慣

・栄養管理
たんぱく質は体重×1.0~1.6 g/日を目安に摂取し、特にトレーニング直後の補給を忘れずに。

・質の高い睡眠
就寝前のスマホやPCを控え、毎日同じ時間に就寝・起床する習慣をつけると深い眠りが得られます。

・アクティブリカバリー
Z1(非常に低強度)〜Z2(低強度)の軽いライドやストレッチで血流を促し、翌日の疲労を和らげます。

◯客観的なサポートの活用

オンラインコーチングなど第三者にチェックしてもらうことで、見落としがちなサインを早めに発見できます。ただし、スパルタコーチに出会ってしまうとオーバートレーニングの一因となる可能性もあるため、注意が必要です。

◯定期的なFTPテスト

4~6週間に1回のテストで、現在のパワーベースを更新し、適切なメニュー設定を行いましょう。ただし、FTPテスト自体がオーバートレーニングの一因となる可能性もあるため、注意が必要です。

4. サラリーマンライダーが陥る悪循環とその対策

◯陥りがちな悪循環パターン

・平日は乗れず週末に詰め込む
平日のトレーニング量が少ないぶん、週末に長時間・高強度ライドを詰め込み、疲労が抜けないまま新しい週が始まってしまう。

・睡眠不足→回復不足→疲労蓄積
残業や飲み会で睡眠時間が削られ、身体の修復が進まず疲労が抜けにくくなる。

・短時間で効果を狙い高強度に偏る
限られた時間でインターバルばかり行い、心身ともにストレスが増大する。

◯悪循環を断ち切る4つの対策

・隙間時間トレーニング
通勤中の階段昇りやウォーキング、朝の15分ローラーなどで血流を促進しましょう。

・週末ライドは「質」を重視
週末は1~2時間の目的別メニューに集中し、残りはポタリングや観光ライドでリフレッシュ。

・睡眠・栄養の確保を最優先
平日は最低7時間の睡眠を確保し、忙しい日でもプロテインなどを取り入れて質の高い栄養補給を心がける様にすると良いでしょう。

まとめ

パワーメーターの普及でトレーニング効率は飛躍的に向上しましたが、数値だけを追いかけるとオーバートレーニングやサラリーマンライダー特有の悪循環に陥りやすくなります。ホルモンバランスの乱れ、中枢性疲労、自律神経の不調、慢性炎症などの仕組みを理解し、計画的なトレーニング設計、日々のセルフチェック、良質な睡眠・栄養管理を組み合わせることで、心身ともに健康な生活を目指してください。

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