自転車ロードレースの安全確保
私自身、選手として15年間、そして監督としては12年間自転車ロードレースの世界に身を置き、数えきれないほどのレースに出場してきました。
その中には、集団の中で走っていると退屈すぎて眠くなってしまうようなとても単調なラインレースから、ずっと集中を強いられるようなスーパーハード&テクニカルなサーキットレースまで、様々なコースというものが存在していました。
但し、どんなコースであったとしても常に注意を払わなくてはならない要素があります。それは、説明するまでもなく「安全」についてです。
では、自転車ロードレースの安全を考える上で、実際にどんなところに注意していくと良いのでしょうか。
今回は、レースを開催する側、そして走る側の、それぞれの立場から安全というものを考察してみたいと思います。
◯レースを開催する側が注意する項目
1.コース
自転車ロードレースのコースというのは非常に複雑な要素を含んでいます。例えば道幅が広くてストレート区間が多い一見安全そうなコースの方が重大事故が発生しやすい傾向があったりします。一方、常にコーナーが連続して一列棒状になってストップアンドゴーを繰り返すようなハードなコースの方がむしろ落車事故が少なかったりもします。これは多くの落車が選手の横の動き(横の自由度)が原因となっているためで、スピードが乗っている直接走行時の転倒の方がコーナリング時の転倒よりもよりダメージが大きくなる傾向と合わさって、「広い直線コースの方が危険」という結論に結びつきやすくなります。また、パイロンや柵などでコースをつくる際もその置き方に高度なセンス(選手の横の動きを減らすためのセンス)が求められます。
2.警備
コース上の警備には大きく分けて二つの種類があります。一つはコース内への人やクルマの侵入を防ぐ「周囲に対しての警備」。もう一つが選手に対して注意喚起を行う「内部に向けての警備(注意喚起)」となります。前者の「コース内への侵入を防ぐ」に関しては、予算と相談しながら制服警備員とボランティアスタッフをうまく組み合わせて配置しながら対応すると良いでしょう。一方、後者については経験が必要となるため制服警備員では対応できなくなります。「笛」と「旗」をつかって効果的に注意喚起を行うことで、結構な数の落車を防ぐことができると感じます。
3.各種動線
会場内の各種動線の確保や配置は事故を減らすために重要な要素となります。なるべくクロスポイントを減らし、人や自転車、クルマの動きがスムースになるように組み立てることが大切です。
◯レースを走る側が注意する項目
1.意識
多くの落車は走る側の「意識」により防ぐことができます。具体的に言いますと「譲る」という意識が大切になります。これは「追い越す側」「追い越される側」両方が注意する内容となります。もちろんプロ選手などは位置取りで勝敗が決まったりもしますが、お仕事をしながら走っている方などは無理して位置取りをするメリットなど殆どないと言い切れます。「集団」というのは全体の調和さえあれば意外と後方を走っていても疲弊しないものです。一方で一番疲れて危険な「集団」というのは皆が前に行きたがるワガママな状態です。
2.周囲(審判長・家族・友達など)
番外編的な内容となりますが、走る人を送り出す側の対応でも落車は減ります。スタート前の選手というのはアドレナリンが出ていて普通ではない状態となっています。そこに油を注げば落車祭りになる可能性は高まり、逆に戦意を削ぐような言葉を効果的にかけることができれば落車は一定数減ると思います。クルマの免許の更新の際などに繰り返し事故の映像などを見せられると、その直後は運転が慎重になる仕組みをうまく取り入れられると良いかもしれません。