価値の選択と最大化
現在、世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス」が開催されています。
「自転車を使用した競争のなかで最もバリューが高い(世界的な知名度の高い)大会は?」と聞かれれば、間違いなく「ツール・ド・フランス」と答えるでしょう。
我々が開催している「ツアー・オブ・ジャパン」も「ツール・ド・フランス」と同じUCI公認国際自転車ロードレース(ステージレース)ではありますが、実際にはレースカテゴリー以外にも以下の様な相違点が挙げられます。
◯総走行距離
TDF=3,460km
TOJ=767km
◯ステージ数
TDF=21ステージ
TOJ=8ステージ
◯ステージ距離
TDF=27km〜230km
TOJ=2.6km〜139km
◯ステージ形態
TDF=ラインレース(スタート地点とフィニッシュ地点が違う)
TOJ=周回コース
3週間という長期に亘って開催が許されているのは「ジロ・デ・イタリア」「ツール・ド・フランス」「ヴエルタ・ア・エスパーニャ」の3大会(グランツール)のみであり、通常のステージレースの最大日数は5日間と定められています。
レース主催者としては、「ツアー・オブ・ジャパン」を開催する上で「TOJの先にツール・ド・フランスがある」という流れは意識していきたく、同じスケールの大会を開催することは難しくとも、可能な限りグランツールに近い形であり続けたいという思いがあります。
しかし、それらは決して簡単なことではありません…。というのも、他のスタジアム&アリーナ型スポーツと異なり、自転車ロードレースというスポーツは、そもそもフィールドそのものをルール的に目標とするイベント(この場合はツール・ド・フランス)と同等にすることができないからです。
それであれば、自分たちのレースが持っている価値を最大化し、戦略的な取捨選択を行い、ストロングポイントを軸としてツールに近づくことが最善策となります。
◯周回コース
上りの回数が増え総獲得標高が大きくなる(厳しいレースになる/平坦のラインレースは単調になりやすく選手たちの運動強度が上がりにくい。レースが力でなく展開で決まってしまうことがある)
◯テクニカルなコース
フィジカルだけでなくバイクコントロールテクニックや集団内での位置取りスキルなどを習得することができる
◯短めの距離
ダレた展開が減りスタート直後から高強度なハイスピードレースが繰り広げられる
◯山頂フィニッシュ
1週間程度のステージレースではなかなか体験できない標高差1,000m級の山頂フィニッシュを体験できる
目的の明確化と戦略的な取捨選択を行うことで、結果的に「ツアー・オブ・ジャパン」の価値を高めることが可能になるのでしょう。
表面上の類似点(例えば距離やレース形態など)を闇雲に追うのではなく、「できることを最大化していく」ことこそが大切なのだと感じます。