ラインレース vs 周回コース
「NTN presents 2019 ツアー・オブ・ジャパン」開幕まであと46日となって参りました。
先週の水曜日に東京・恵比寿にある「SUBARU STAR SQUARE」に於いて「公式記者発表」を開催し、いよいよここから大会本番に向けて様々な準備や調整を一気に進めていく形となります。
そんな中、2019年のコースについては、まだ一部のステージで最終調整を続けている状況です。
先日の「公式記者発表」の際に今年のコース概要を先行してお伝えいたしましたが、UCIの承認などを含めて最終決定に至るまでのプロセスはそんなに簡単ではありません。
まずは一日もはやくすべてのステージを確定させたいと思います。
さて、ご存知のように「ツアー・オブ・ジャパン」は全ステージ「周回コース」を採用しています。
これは意図的に設定したというよりかは、日本の道路使用許可の難易度の高さから、現在に至る過程のなかで結果的にそうなってしまった、というのが実際のところです。
一方、「国際大会開催を通じた各地域の盛り上がり」を目指している現在の「ツアー・オブ・ジャパン」にとっては、正直、「ラインレース(周回コースではなくTown to Townのコース)」というのはあまりメリットが感じられない選択肢だったりもします。
「ラインレース」を開催するための各種調整作業や経費負担などを考えると、その費用対効果は決して高いとは言えず、また、一回通過するのみという状況では、開催自治体の盛り上がりを演出するのは至難の業ともいえます。
「ツアー・オブ・ジャパンもいつかはラインレース」といった声をいただくことがありますが、それらは「持続可能なレース運営」という視点でみた場合、あまり良いチャレンジではないように感じています。
そこで今回は、参考までに「世界有数のワンデーレース(一日で終わるレース)」のコースを改めて確認してみたいと思います。
◯モニュメント(世界5大クラシックレース)と世界選手権ロードレースのコース
ミラノ〜サンレモ(完全ラインレース)
ロンド・ファン・フラーンデレン(周回コース含む/全体的に狭いエリアをまわっている)
パリ〜ルーベ(完全ラインレース)
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(完全ラインレース)
イル・ロンバルディア(完全ラインレース)
世界選手権ロードレース(周回コース)
「ラインレース」の価値というのは、基本的に「テレビ放映(もしくはライブ配信)」があってこそ、と言っても良いでしょう。
また、元々大会自体に「歴史」と「ステイタス」があり、そこに世界トップクラスの選手たちが走っていることで、「あのレースを走るあの選手を一瞬で良いから生で観てみたい」というモチベーションが湧くのだと思います。
これらの条件が揃っていないレースに関しては、やはり現実的には「周回コース」でレースを開催しないと、「持続可能なレース運営」は達成できないように感じます。
ひとつ、「面白いなあ」と感じるレースがあります。それは、現在、まさにシーズン真っ盛りのベルギーのクラシックレース(代表的レースはロンド・ファン・フラーンデレン)の形態です。
実はベルギーのクラシックレースというのは、非常に狭い地域のなかで開催されており、違うレースなのにコースは同じ場所を何度もつかっていたりもします。
いわゆる「周回コース」ではないものの、概念的には「周回コース」に近いレースづくりがされていて、約1ヶ月間に亘りベルギーのクラシックレースシーズンは大変な盛り上がりをみせています。
また、完全な「周回コース」で開催される世界選手権ロードレースも、会場の盛り上がりは大きなものがあります。
もちろん「ラインレース」にも大きな魅力があるのは理解していますが、やはり、「その地に合ったレース形態」というものが、非常に大切であるのは言うまでもありません。