維持と改善と変革
年末になり「2019ツアー・オブ・ジャパン」の準備が本格化しています。
といっても「ツアー・オブ・ジャパン」の準備は年間を通して発生しており、文字通り「一年がかりの作業」と言っても良い業務内容となっております。
「ツアー・オブ・ジャパン」は2019年で22回目の開催を迎えます。
私が「ツアー・オブ・ジャパン」の仕事に就いてから2019年で5年目となりますが、改めてこれまでの時間の振り返りと、今後の展望などを自分なりに再確認しています。
その上で、「ツアー・オブ・ジャパン」を長期的に継続・発展させていくには、大きく分けて以下の3つの要素を常に意識していく必要があると感じています。
◯維持
基本的に「現状維持」について人々はほぼ関心を示してくれません。極端な例を挙げれば「空気があって毎日感謝している」と思って生きている人は殆どいないと思います。但し、大会を維持していくためには、現実的に我々が持っている「リソース(予算や人材)」の大半を「現状維持」のために消費することになります。また、「予算削減」や「人事異動(TOJは各ステージの実行委員会を実質的に自治体様が管理していることが多く自治体様の人事異動は避けては通れないリスクの一つ)」などが発生した際には、外向きにはなにも変化がなくても、内部的には新規案件を立ち上げるのと同等の負荷を受けることになってしまいます。しかし一方で、「現状維持」を良しとしたマインドで大会運営を続けていけば間違いなくいずれ衰退がはじまります。ですので、「維持」のためのリソースがどれくらい必要かを見極めた上で最低限それを確保し、そして、毎年若干の余剰リソースを用意して、実現可能な進化を模索する必要があるわけです。
◯改善
最近、「改善」ではなくて「改悪」という言葉をチラホラと見ることがあります。要するに、改善を求めた結果、以前よりもむしろ悪くなってしまった状況を指す表現です。しかし、「改善」とは「良くするためにある程度のリスクを取る前向きな行為」であり、「誰もが思いついて簡単に良くできる様な項目」でない限り、すぐに目に見えた結果を生み出せることはむしろ稀だと感じています。私の場合、TOJの仕事に就いてから運よく(周囲の人に恵まれて)いくつかの「改善」を比較的短期間で実現することができましたが、それでも「改善した」と実感できるまでにはある一定の時間を要しています。なにかを変えれば必ずリスクと負荷が発生します。また、明らかに悪かったことを改善できたとしても、人間には「慣れ」と「変化に対する抵抗感」という習性があるので、「改善」に対する評価や感謝などを殆ど得られないこともあります。「改善」は物事を発展させていく上で絶対に必要な要素ですが、失敗(人間関係の悪化なども含む)や負荷増大を恐れてどうしても現場レベルでは敬遠されがちな要素になります。「改悪」を恐れるマインドは理解できますが、ひとりひとりが「将来の自分のために行う行為」として認識し、常にチーム内で「改善」が意識される雰囲気づくりが大切だと感じます。
◯変革
変革は「変える」という文字が使われていることからもわかるように明らかになにかを変える行為になります。最も多くのエネルギーを消費し多大な摩擦が生じることを覚悟しなくてはならない行為でもあります。状況によっては誰かの人生を左右するようなこともあるでしょう。「改善」ではなくて「変革」を選択しなければならないシチュエーションというのは、「現在の仕組みのままではいずれ破綻する」、「この事業がいったいなんのために誰のために行われているのかが定まっていない」、「間違ったマインドを持った既得権益者たちによって本来とは違った運用がされている」など、根本的かつ重大な状況下に置かれた特殊な状態の時だと感じています。私自身、若い時は「変革派(決してコンサバではない)」寄りの人間だった気がしますが、一方で、俯瞰して物事の全体像を見れておらず、「変革ありきの変革」だった様にも感じます。また、「改善」と大きく違うのは、正しい「現状維持」機能をも破壊するリスクがあり、たしかに個別の悪い部分は取り去ったものの、「維持」自体が困難になるケースにもあったりします(政治の世界でもよくあります…)。自分自身がTOJの仕事に就いてから「変革」に近い行動を取ったとは思っていませんが、「この事業がいったいなんのために誰のために行われているのか」については明確にさせました。そして、今後もTOJに「変革」は必要でないかと聞かれれば、決してそうだとは思っていません、但し、その「変革」というのは、TOJ単体というよりも、「自転車界全体」で進めるべき事柄だと感じています。
ということで、この4年間の活動を通じて、「できたこと」、「できなかったこと」、「これからやれそうなこと」、「できそうだと思っていたけどかなり厳しいこと」などが見えてきました。
4年間精力的に前進を続けてくると、当たり前ですが「維持することへのハードル」も上がってしまいます。
当然これまでの様なペースで「変化」をアウトプットし続けることは難しくなりますが、「維持」、「改善」、そして「(自転車界全体の)変革」を意識して活動を続けていきたいと思います。