チーム経営

現在、世界3大ステージレース(グランツール)のひとつである「ブエルタ・ア・エスパーニャ」がスペインで開催されています。
「ブエルタ・ア・エスパーニャ」は、UCI(国際自転車競技連合)が「UCIワールドツアー」という名称で管理している年間シリーズ戦の一つで、世界に18チームある「UCIワールドチーム」はこの「UCIワールドツアー」各戦への参加が義務付けられています(2017年は全レースが対象ではない)。
元々世界中に点在していた「レース」と「チーム」を束ねることで、UCIは「UCIワールドツアー」という「疑似リーグ」を構成し、そのことによって多くのメリットが生み出されてきました(もちろんデメリットも発生していますが全体的にみるとポジティブな要素が多い)。
特にチーム経営に関する部分については長年明確な規定などが曖昧だったところがしっかりと体系化され、健全なかつ強固な組織体と潤沢な資金力がなければ「UCIワールドチームライセンス」を取得することが困難な状況へと変化しました。
伝統的な考えを持つドメスティックな関係者などは「UCIワールドツアー」ができたことで多くのチームとレースが消滅したと嘆いていたりもしますが、一方で、給与未払い問題や極端な低賃金での契約、更にはドーピング問題などが蔓延っていたかつての状況が良いわけもなく、明確な規定を設けて体系的に自転車ロードレース界を創りあげる必要性があったのは間違いないところです(粗悪な運営のチームが消滅するのは仕方がない)。
現在、「UCIワールドチーム」を運営するには日本円にしておおよそ15億円以上の年間予算が必要(戦えるチームを創るという意味で)とされています。
世界中から注目される「ツール・ド・フランス」への出場が確約されることを考えれば15億円は安い様な気もしますが、それでも既存の「UCIワールドチーム」の一部は毎年金策に苦労しているのが現実だったりもします。
そんな中、「ブエルタ・ア・エスパーニャ」へ出場中の「UCIワールドチーム」の一つである「キャノンデール・ドラパック・プロサイクリングチーム」が、来季の目標チーム予算に700万ドル足りていないことを公表し、スポンサーを募集する一方で、個人からの支援も受けるべくクラウドファウンディングの実施に踏み切りました。
これまでも経済的な理由でチームが解散に追い込まれる事例は数多くありましたが、「ツール・ド・フランス」総合2位のチームがこのタイミングで不足金を敢えて公にし、クラウドファウンディングを利用して資金確保に動いたのは異例の展開といえます。
いつも主張していることですが、本来「チーム」と「レース」というのは同じ屋根の下に存在しているべきであり、この辺りがよりドラスティックに改善されていかなければ今後も同様の事態が継続的に発生してしまうものと思われます。
「元々あったものを理想的な形に創り変える」ということは、「理想的なものをゼロからつくる」よりも大きな労力を必要とするということを改めて思い知らされた次第です。


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