縁の下の力持ち
国際レースを開催するためには様々なスタッフの力が必要になります。
しかし、それぞれの業務は専門性が高いものが多く、また、現状これらを効率的に教育していくような学校などが存在しているわけでもありません。
ですから、各業務を現場で担当していくなかで経験を積み、そして各個人が自らの努力で徐々にスキルアップしていかなければならないのが現状です。
現在、国内では「選手の発掘・育成」についても包括的なプログラムがないような状況ですから、「レース運営に関するスタッフ(審判業務も含めて)の発掘・育成」については更に困難な状況に陥っているともいえます。
これまでも当ブログなどでお伝えしてきたように、「自転車ロードレース」という競技は、スタジアムなどで開催されるスポーツとは違い、街や自然のなかに存在している公道や施設などをその時限定でスポーツフィールドに変えて運営するという点で、非常に特殊な側面を持ったスポーツイベントです。
レースごとに開催条件が大きく変わるので、その都度、その場所に合わせたレース運営を行える特殊なスキルと柔軟性が必要になります。
また、審判業務についても、「ルールに従って厳格にジャッジする」というよりかは、刻一刻と変わり続ける環境に合わせて、「最大限フェアなジャッジを行える」豊かな感性の方が重要となります。
「自転車ロードレース」は、一人の審判の目で見えていない場所で競技の大半が展開しているので、「想像力」がとても重要になり、俯瞰の目というか、五感で感じる能力が必要だといわれています。
そして、他の競技と決定的に違うのは、モトコミセール(バイク審判)などは、それこそ選手たちと同様のリスクを背負いながら、「公平なレース運営」という大命題に取り組んでいる点です。
もっと言えば「自転車ロードレース」の場合、カメラマンも命懸けの業務となります。
他のスポーツで、テレビカメラマンやスチールカメラマンがその業務中に「大きなリスクを背負っている(ガードレールのないアルプスの山を時速100km/h以上で撮影をしながら下るなど…)」という状況は普通はあまり考えられません。
この様に、室内での教育だけではとても身につけられない特殊なスキルや能力を必要とし、そして、少なくないリスクと共存していけるレース運営スタッフという存在がなければ、優れた「国際自転車ロードレース」を開催することはできないのです。