様々な立場
今年の「ツアー・オブ・ジャパン」を終えて改めて感じたことがあります。
それは、大会を取り巻く人たちの立場によって、考え方、感じ方、評価ポイント、問題点、その他もろもろが、大きく異なっているということです。
いつも書くことですが、私自身は、元選手、元監督という経験を経て、いまは大会主催者の職に就いています。
また、直接メディア関連会社などでの職歴はないものの、テレビ解説者として17年間世界のロードレースを伝えるという仕事を担当してきたほか、様々な媒体で原稿なども書き続けてきており、伝える側の経験値はそれなりにあると自覚しています。
更に、「プロの観客(自分自身が目指していた?)」というフレーズを勝手に生み出して「レースを観る文化」の発展にも力を注いできたように、観客の気持ちも十分に理解しているつもりです。
そして、「宇都宮ブリッツェン」在籍時代には、「地域愛」や「自治体」というものにも数多く触れてきたので、「地域」が持つパワーや「地元」の重要性についてもたくさん学んできました。
一方で、審判である「コミセール」の経験や、設営などに関わる部分の実務経験は殆どなく、「経験していないこと」もまだまだ数多く残っています。
それでもトータルでみると、恐らく経験してきた領域の広さはそれなりにあると感じており、だからこそ実感する「難しさ」は年々大きくなりはじめています。
人間というものは、自分が経験をしないと、全てではないにしろ、やはり「本質」というものをちゃんと理解をすることができない生き物です。
思慮深く、控えめな人であれば、自らが経験していなくとも、相手の立場や考え方などを推測し、バランスがとれた発言や行動を生み出すことができるでしょう。
しかし、実際にはそういった人というのは希少な存在であり、大半のひとが、「自分の経験のみから生み出した価値観」をベースに、「自分の都合の良い立ち位置」からの発言や行動に終始してしまいます。
もちろん、私自身もできていないことだらけですが、それでも、「多くを知る」、「多くを経験する」ということの重要性についてはよく理解しているつもりです。
人間社会に「様々な立場」が存在していることは仕方がないことではありますが、実際問題として、多くの人たちが「自分の価値観の上に生きている」ということを考えると、いかにしてその「相反する様々な感情」をケアして満足させていくことができるかが、「サービス業」であるレース運営を成功させるためのカギになるのだと思います。