UCI「SafeR」アップデート
今回は、1月16日にUCI(国際自転車競技連合)が公開したロードレースの安全対策プログラム「SafeR」に関する内容と、そこに記載された事故原因別の内訳について考察してみたいと思います。
ロードレースの魅力のひとつは、高速かつ緊迫した駆け引きにあります。しかし、その分だけ常に転倒や接触のリスクが伴うことも事実です。
UCIは従来から推進してきた安全対策プログラム「SafeR」をアップデートし、新たなデータや施策を公表しました。
今回特筆すべきは、事故原因を数値化して内訳を示した点です。これにより、より具体的にどの部分が最も危険度が高いのかが把握しやすくなっています。
事故原因の内訳
2024年に、UCIワールドツアー、UCIウィメンズワールドツアー、UCIプロシリーズ(男女)の各イベントで合計497件の落車事故などが記録されました。以下、その内訳となります。
① 選手の不注意が引き起こす事故:35%
② レースの戦術的ポイント(山岳コース、石畳区間、スプリントなど)が引き起こす事故:13%
③ 危険な道路状況(特に濡れた路面)が引き起こす事故:11%
④ 道路インフラが引き起こす事故:9%
⑤ 劣悪な道路状況が引き起こす事故:4%
⑥ 随行車両の挙動が引き起こす事故:1%
※②と③は該当区間へのアプローチ(位置取り)も含まれる
今回の結果からわかるのは、約半数の事故が選手の精神状態(集中力)や過度な動きなどによって起きており、従来大きく取り上げられてきた「原因と対策」とはやや異なる部分があるということです。
これは決して選手自身を責める趣旨ではなく、事故の根本的原因を探るための前提が誤っていた可能性を示唆しています。
今後、統計や分析を進めることで、より正確な「原因と対策」を導き出せるようになるでしょう。
そして同時に、パッシブセーフティ(受動的安全対策)の重要性が改めて認識されるべきだと感じます。