ワールドランキング2位と3位のチームが合併へ
現在、巨大なワールドチーム同士の合併のニュースがレース界を揺るがしています。
対象となるチームは、UCIワールドランキング2位の「ユンボ・ヴィスマ(オランダ)」と同3位の「スーダル・クイックステップ(ベルギー)」になります。
業界上位の合併というのは、一般企業同士などであればよく見聞きすることではあります。
ちなみに企業合併によるメリットというのは一般的に以下の様な内容が挙げられます。
①シナジー効果
合併する複数の会社が別々に事業を行うよりも、新たな付加価値を生みだせたり、重複する事業のコストを削減できたりする。
②株価上昇効果
株主が合併に対してポジティブなイメージを持った場合、株価が上昇する可能性がある。
③現金が不要
消滅会社に株式を渡すことも可能なので、現預金が多くない場合でも資金調達を行わずに実施できる。
④低コストでの事業拡大が可能
優秀な人材や設備、販売網、取引先などを獲得できることもあるため、低コストでの事業拡大が可能となり、技術開発や従業員の教育などに要する時間を短縮できる。
この様にみていくと、今回のチーム合併でも、①と④を中心に幾つかのメリットが生まれる可能性があります。
但し、根本的な部分に立ち返ると、自転車ロードレースチームはあくまでスポーツチームであり、ワールドツアーライセンスを18に設定している以上は、効率化して最終的に大きなチームが5つみたいなことは、スポーツの性質上あり得ない選択肢だったりもします。
もちろん、ライセンス枠がひとつ空けば、セカンドディヴィジョンにあたるUCIプロチームから基準を満たしたチームが昇格してくるシステムでもあるので、資本主義経済の仕組みとしては正常に機能するのかもしれません。
一方で、ワールドランキング2位と3位のチームが、現在の運営費を賄える予算を個別に確保できないという現実は、自転車ロードレースチームのビジネスモデルが破綻しているという解釈にも繋がっていきます。
現在の自転車ロードレースチームのビジネスモデルというのは、ツール・ド・フランスを中心とした世界にいくつかある「価値あるレースに出場できる」「そこで結果を残すことでスポンサーのネームバリューが上がる」という部分をベースとして、スポンサー企業などに費用対効果を提供しています。
しかし、トップ選手の給与が高騰し、様々な科学的アプローチを導入することによりチームスタッフの数も増え、その結果、年間予算がどんどん膨れ上がる状況となっています。
また、お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、年間予算が上がり、選手の給与が高騰すると、それは間接的に一般ユーザーの皆さんが購入する各種機材の価格にも転換されていきます。
入場料収入やグッズ収入などがほぼない自転車ロードレースのマネタイズを考えると、製品価格に転嫁するというのはある意味で合理的なやり方なのかもしれませんが、それも限度を超えていくと、市場自体がシュリンクする要因にも繋がってしまいます。
自転車ロードレースというスポーツは、直接的な収益構造をほぼ持たず、実力や人気などに直結しやすい入場料収入やグッズ収入などで売り上げを上げることが難しい構造となっています。
拡大(背伸び)していくためには、いまある価値を最大化するための営業力や、表面上の損益にはあまり興味がない「パトロン型スポンサー」を見つけ出さなくてはなりません。
正直、日本国内でもいたるところで「背伸び」が発生しています。もちろん、日本は資本主義社会なので背伸びしてナンボな部分はありますが、それでも継続不能なレベルに達してしまうと本末転倒となってしまいます。
個人的には一度地に足をつけ、まずは実力にあった位置で継続性のあるビジネスモデルを考えていく時期に差し掛かっている様にも感じています。