学生レースの事故について
とても悲しい事故が起きてしまいました。
鹿児島県で開かれていた第77回全日本大学対抗選手権(インカレ)の男子ロードレース中に発生した落車事故で、意識不明の重体となった法政大学1年生の塩谷真一朗選手が、同日夜に搬送先の病院で息を引き取りました。
謹んで塩谷選手のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆様に心からお悔やみ申し上げます。
UCI(国際自転車競技連合)公認国際自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン」におきましては、今回の事故に至った原因などを関係者から聴取し、このような痛ましい事故が再発しないよう、事故防止に向けて適切に対応してまいります。
今回の事故に関しましては、主にコース設定やコース上の安全対策などが論点として挙がってくると思われますが、一方で、スポーツバイクまわりの安全対策に関する議論も高まっており、今回は改めて現状の問題点などについて少し触れてみたいと思います。
私自身、これまでブログや自著、連載、テレビ解説などで、現在のロードバイクを取り巻く安全対策について、内包する問題点を自分なりに発信してきました(残念ながら私の力不足もあり、あまり賛同を得られていませんが…)。
特に選手が着用する安全装備の研究開発などについては、「ツール・ド・フランス」を頂点とするトップレースの現場から積極的な改革が必要だと強く感じています。
実際に安全装備を着用する流れを生み出していくためには、最上位の統括団体であるUCIの競技ルールを変更していく必要があり、かつてヘルメットの着用が義務化された時(この時選手たちはヘルメット着用反対のデモを行いました…)の様に、段階的にプロテクター着用を義務化し、同時に競技用自転車への安全装置の装着も義務化していき、更にはモータースポーツ同様にレースの速度を下げるための機材規制などももっと取り入れていくべきだと考えております。
近年、「速く走るため」の研究開発は加熱の一途ですが、逆に「乗員の命を守るため」の研究開発は殆ど進んでいない印象があります。各メーカーなどは売れないモノはつくれないという事情があるのでしょうが、少しずつ価値観を変えていき「速い」よりも「安全」が求められる時代にしていかなくてはなりません。
競技団体やメーカーに対する要望など、自分にできることは継続して参りますが、一方で、各メーカー様に於きましても、UCIのルール改正などを待たずに、先行して乗員を守るための安全装備の開発なども積極的に進めていただきたいと感じています。
昨今の機材の高速化、高額化は、中長期的な視点でみた場合、スポーツサイクルにとってあまり良い流れではないはずです。引き続き、皆が安心して楽しめる環境づくりを考えて参ります。