UCIレース主催者の役割について
たまに(年に数回)UCIレース主催者の仕事について質問や相談を受けることがあります。
「たまに」であるのは、恐らくUCIレース主催者の全体像があまりにも「一般的でない(なぞ過ぎる)」ため、興味を持つ人の数自体が少数派だからなのだと思います。
そこで今回は、UCIが主催者向けに配布している「オーガナイザーズガイドブック」の内容を抜粋&要約する形で、UCIレース主催者組織内の役割について簡単にご紹介したいと思います。
大会ディレクター(GENERAL DIRECTOR)
各種イベントの運営経験者で、更に自転車競技に関する知識があればベスト。予算の作成や管理、各部門責任者の任命や調整、関係団体に対する代表者としてプロジェクト全体を管理。
技術・競技マネジャー(TECHNICAL & SPORTING MANAGER)
元選手かロードレースについての知識を持ちあわせている者が適任。設営・運営計画全般、コース設定、地方自治体との調整、各種許可申請、コミッセールやマーシャルの手配、チーム招聘、無線手配、車両手配、計測手配、セレモニー手配、テクニカルガイドの作成など。
安全・環境対策マネジャー(SAFETY & ENVIRONMENT MANAGER)
安全対策の知識や経験があり、レース会場となる各地域について理解が深い者が適任。また、警察や公共機関とも良い関係を保てることが望ましい。各種指示看板の設置、海外チームの招聘(ビザ関連)なども担当。
輸送・補給マネジャー(LOGISTICS MANAGER)
各種輸送やイベント関連の設営物に関する知識を持つ者が望ましい。観客席、臨時事務局、駐車場、大型テント、柵、トイレ、安全資材の設営。大型ビジョン、コンピュータ、無線などの配置及び管理。宿泊関連やケータリング、交通手段等の決定及び手配。大会関係車両の管理。設営物に関する許可申請など。
マーケティングマネジャー(MARKETING MANAGER)
レースを開催するために必要な財源を確保する重要な役割。広告や宣伝などの業界経験がある者が望ましい。もしくは広告代理店などが請け負うこともある。大会ディレクターが兼務することも多い。プレゼン資料やセールスシートなどの作成。スポンサーとの契約・管理など。
通信・報道マネジャー(COMMUNICATIONS & MEDIA MANAGER)
メディアに関する知識や経験を持つ者、コメンテーターやライター業などを生業としている者が適任。各媒体やSNSなどでの露出を最大化させる。可能な限り広くイベントを周知させる計画を作成し実施する。ジャーナリストとの連携(報道官)。ジャーナリストが仕事をするためのプレスルーム、通信手段、移動などをサポート。スポンサーの協賛メリットを最大化させるためにマーケティングマネジャーとも連携。
管理・財務マネジャー(ADMINISTRATIVE & FINANCE MANAGER)
財務や法律の分野に堅固なバックグラウンドを持ち、各種規定などを遵守できる者が望ましい。財務状況を大会ディレクターに共有し、大会の財務諸表の作成・管理する。キャッシュフロー計画を作成し、各種支払い、保険契約、ボランティアスタッフの募集や管理なども行う。
実際は、ここまで細かく各担当者を配置している大会は限られており、ツアー・オブ・ジャパン規模のレースでも、ひとりの人間が何役も掛け持ちで担当する形になっています。
また、実務内容についても、組織の体制や個人の資質に合わせ、都度カスタマイズして運用しているのが実態です。
いずれにしても、膨大な実務とそれらを効率的にマネージメントできる組織が必要になります。