日本国内にUCIコンチネンタルチームが多い理由
現在、日本にはUCI(国際自転車競技連合)に登録する「UCIコンチネンタルチーム」が8チーム存在しています。
これは世界で4番目に多い数字であり、競技力や競技人口と比例していない一種の逆転現象として、だいぶ前から問題視されてきました(リソースが分散してしまい小さい活動のみが増えてしまう。本来はいくつかのチームが合併してプロチームを結成する方が世界を目指す上で効率的)。
といことで今回は「日本国内にUCIコンチネンタルチームが多い理由」について考察してみたいと思います。
まずは、自転車ロードレース界のチームカテゴリーを確認してみましょう。
◯UCIワールドチーム(ファーストディヴィジョン)
世界に19ある正真正銘のプロチーム。年間予算は、下は約7億円から上は約65億円と、かなりの開きがあります。世界のトップレース(UCIワールドツアー)への出場が確約されています。ちなみに強豪国であるイタリアにはワールドチームは存在しておらず、スペインも僅か1チームのみとなっています。一方、最多はベルギーとフランスの3チームとなっています。出場できるレースはUCI1クラス以上となっています。
◯UCIプロチーム(セカンドディヴィジョン)
こちらも世界に19チームあります。年間予算は数億円とワールドツアー下位のチームと同等程度。年間ランキング1位のチームには、翌年のワールドツアー全戦への出場権が与えられます。また、それ以外のチームでも、ワイルドカードにより、グランツールやメジャークラシックレースへ出場することも可能となっています。すべてのUCIレースに出場可能です。
◯UCIコンチネンタルチーム(サードディヴィジョン)
現在、世界に166チーム存在しています。プロとアマの中間に位置する存在であり、本場ヨーロッパでは「若手育成チーム」「セミプロチーム」に位置付けられています。年間予算は数千万円から1億円強程度が一般的。ワールドツアー以外のレースに出場できます。
現在、アジア(東アジアや東南アジア)には「ワールドチーム」と「プロチーム」は存在しておらず、すべて「コンチネンタルチーム」となっています。
そして冒頭に書いた様に、その中で「中国=11チーム(世界最多)」「日本=8チーム(世界で4番目に多い)」と、アジアには多くのコンチネンタルチームが存在する状況になっています。
それでは本題の「日本国内にUCIコンチネンタルチームが多い理由」について考えてみます。
「国内チームがUCIコンチネンタルチーム登録を行う理由」
①UCIアジアツアーや他の大陸ツアーに出場するため
本来であればこの理由が最も一般的であり、海外のレースに出場しないのであれば、通常コンチネンタル登録を行う必要性はそれほどないといえます。
②ジャパンカップやTOJなどUCI-1クラス以上のレースに出場するため
基本的にクラブチームはUCI-1クラス以上のレースに出場できないため、国内のハイカテゴリーのレースに出場するためだけに、コンチネンタル登録を行う国内チームが一定数存在している状況です。
③チームバリューを高めるため
「UCIコンチネンタルチーム」というのが一つのステイタスになるため、スポンサー獲得のためにコンチネンタル登録を選択するというパターンも散見されます。
現在、伝統国のなかでもイタリアなどはコンチネンタルチームの数を増やす傾向(10チーム)にあります。恐らく、イタリア国内の育成チームやレースを取り巻く環境に変化が生じているものと思われます。
一方、ベルギーは5チーム、フランスは4チーム、スペインは0チームと、競技人口が多いにも関わらずコンチネンタルチームが少ない伝統国も数多く存在しています。
これらはなにを意味しているかというと、「国内に非UCI(国内連盟管理下)のアマチュアレースがしっかりあるかどうか」という部分が大きく影響しています。
UCI登録を行うということは、「国内外のUCIレースに積極的に出場して、UCIポイントを獲得する理由がある」からになります(UCIワールドチームは育成チームを持つ必要があるので、その関連のコンチネンタルチームも存在しています)。
本来であれば、非UCI(国内連盟管理下)のレース及び育成リーグなどが国内にしっかりと整備してあり、その上に「ある程度選ばれた選手」のみが出場できるUCIレースが存在していて、さらに「階段を上ったエリート選手」が国際的なハイカテゴリーのレースにチャレンジしていく、というのが理想的なヒエラルキーといえるでしょう。
例えばスペインなどは、「UCIワールドチーム=1」「UCIプロチーム=4」「UCIコンチネンタルチーム=0」となっているので、コンチネンタルチームに該当するアマチュアチームとレースシリーズが国内にしっかりと存在しているということになります。
一方、現状の日本というのは、非UCI(国内連盟管理下)のレースが本場に比べてきっちりと整備されていないため、国内チームが年間の活動をある程度満たそうとすると、背伸びをしてまでUCIコンチネンタルチーム登録を行なわなければならない状況に陥ってしまったりするわけです。
私自身が考える理想的な形というのは以下の通りです。
◯UCIプロチーム:1チーム(外国人と日本のトップ選手が所属/コンチネンタルチームの上限を設定してチームの合併を促す)
◯若手エリート選手が集結したUCIコンチネンタルチーム:2チーム(ナショナルチームと連携)
◯非UCIのクラブチーム:現状の学連、JCL、JBCFチームなど(ポイントランキングやカレンダーの連携)
そして、日本全体の強化方針を鑑み、国内UCIレースのクラス設定(場合によってはジャパンカップやTOJの戦略的クラスダウン)なども合わせて考えていくべきとかと感じています。