バーチャルレースの可能性
7月の第1・第2・第3の週末に、バーチャルサイクリングサービス「ZWIFT(ズイフト)」を使用した「バーチャル・ツール・ド・フランス」が開催されました。
このレースには、リアル「ツール・ド・フランス」に出場する18のUCIワールドチームと2つのUCIプロチーム。更に今回特別に招聘された3つのUCIプロチームを追加した合計23チームが出場しました。
また、注目すべきは、16の女子チームも参加し、テレビ放映やSNS含めて男子と女子が同列に扱われていた点です。お陰で女子チームや女子選手への理解が進み、また、バーチャルレースの特性上、素顔が見れるので(ヘルメットやサングラスを着用していないため)、選手ひとりひとりの表情などをしっかりと認識することができました。
今回は、リアルレースの頂点に君臨する「ツール・ド・フランス」と、バーチャルレースのトップランナーである「Zwift」がコラボしたことにより、参加チームや選手のバリュー、イベントとしての演出、バーチャル空間のクオリティ、そして、レースとしてエンターテインメント性などが際立って高かったことにより、自転車界だけではなく、多くの一般メディアからも注目を浴びていました。
そんな、「時代の扉を開いた」感のある「バーチャル・ツール・ド・フランス」ですが、今回は、リアルレースの主催者視点で、現状考えられるメリットとデメリットなどを考察していきたいと思います。
◯バーチャルレースのメリット(リアルレースの主催者目線)
・道路使用許可を取る必要がない(苦情もない)
・落車事故のリスクがない(大会関係車両の事故もない)
・デジタル空間なので映像制作(撮影)の必要がない
・移動や宿泊、食事などに関する手配や経費が削減できる
・会場設営の必要がない(ここが最も大きい)
・感染症拡大防止対策になる(現状)
◯バーチャルレースのデメリット(リアルレースの主催者目線)
・地域貢献型レースが成り立たなくなる(自転車レースは観光誘致ツールなので)
・経費は削減できるが収入の仕組みも変わってしまう(人が集まることに価値があるので)
・質の高いプラットフォームではリアルレースのコース再現が難しい(コストがかかる)
・参加選手全員にバーチャルレース出場環境を整えてもらうことが大変
・現状ではバーチャルレースに後ろ向きな選手は意外と少なくない
・これまでの自転車レースの価値観が大きく揺らぐ
こうやって挙げてみると、リアル型自転車レース主催者にとってのバーチャルレースというのは、あくまでリアルレースとセットで考えていくべきということがみえてきます。
一方、バーチャルレースの世界は日進月歩で進化しているので、遠くない未来に「バーチャルレースをつかった街興し」を考える自治体さんがでてくるかもしれません。
いまを大切にしつつ、未来の可能性を模索していきたいと思います。