ロードレースの方向性
これまでもたまに「ツアー・オブ・ジャパン」のステージ距離や内容、形態についてのご意見を目にすることがありました。
それらは大抵、「本来、ロードレースとはラインレースかつ長距離で開催されるものであり、そうでなければ世界との差(選手たちの)は縮まらない…」といった伝統的な見解から派生しているものが大半でした…。
しかし、日本と世界との根本的な差というのは、距離や時間に対する適正よりも、基本的なフィジカルパワーやレーススキルに起因しているものが大半だと認識しています。
また、世界的な傾向として、近年ロードレースの「短距離化」が顕著になってきています(トレーニング面に於いてもダラダラと長距離を走るだけでは強くなれないという意見が多くなってきています…)。
今年、それらがハッキリと見受けられたレースの一つに「ツール・ド・ラヴニール(U23版ツール・ド・フランス)」があります。
Stage 1:128.8km(平坦コース)
Stage 2:32.1km(チームTT)
Stage 3:162.3km(丘陵コース/3級上りフィニッシュ)
Stage 4:158.2km(丘陵コース)
Stage 5:158.9km(丘陵コース)
Stage 6:124km(丘陵コース)
Stage 7:103.5km(丘陵コース/3級上りフィニッシュ)
Stage 8:23.1km(超級上りフィニッシュ)
Stage 9:67.2km(1級上りフィニッシュ)
Stage 10:78.1km(1級上りフィニッシュ)
前半はアップダウンの多いラインレースが主体で、後半の山岳ステージは驚くべき短距離コース(第8ステージは23kmのヒルクライムステージ)が組み込まれており、もはやその距離の短さはTOJ以上と言っても過言ではありません。また、コース全体の特徴もTOJに近づいてきている様に感じます。
もちろん、ステージ距離の短縮はU23の選手たちの将来を考慮した形での判断だったのかもしれませんが、それにしても距離が極端に短くなってきているので、恐らく、ロードレースの今後の方向性を模索していくための実験的な要素も含んでいるのだと感じています。
こういった世界的な流れをみてもわかるように、日本のレースの距離をただ長くしたり、お金をかけてラインレース化しても、正直、根本的な解決には結びつかず(国内で長距離レースを開催してもまったりする時間が増えるだけ…)、むしろ、それらを実施するための労力やコストを考えると単に「コスパが悪いレース」となってしまいます。
近年、世界では「トラックレース」「シクロクロス」「MTBクロスカントリー」といった「短時間高強度」の競技をバックボーンに持つ一流ロード選手が増えています。
短絡的にロードレースの距離や形態を「選手強化の主犯」とみなすのではなく、上記内容を総合的に考えながら、日本の社会環境にあったレースづくりを進めていかなくてはなりません。