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栗村修のワールドツアーへの道

KURIMURA's Blog

主催者の権利

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7月7日に開幕する「第105回 ツール・ド・フランス」ですが、開幕直前のこのタイミングで大きく揺れています。

原因は、昨年9月に開催された「ブエルタ・ア・エスパーニャ」第18ステージのレース後に実施されたドーピングコントロールで基準値を大きく上回るサルブタモールが検出されたクリストファー・フルーム(チームスカイ)に対する正式な裁定が決まらないままツール開幕を迎えそうな状態だったことから、主催者のASO(アモリ・スポル・オルガニザシオン)が、UCI(国際自転車競技連合)ルールで定められている「主催者の権利(選手もしくはチームが自転車競技あるいはレースのイメージを著しく傷つける可能性があるならレースから除外されうる)」を行使し、フルームのツール出場を拒否するという報道がされたからです。

しかし、翌日になって、UCIからフルームに対する今回のサルブタモール問題に関する手続きが終結したと発表(フルームが無実であることが立証された)があり、これを受けて、ASO側はすぐにフルームに対する出場反対の意向を取り下げる声明をだしました。

結局、周囲が振り回されただけのお騒がせな二日間だったわけですが、今回の件については、フルーム側に関しても、ASO側に関しても、現行のルール上に於ける彼らが持つ権利を正当に行使しての行動であったことは間違いありません。

本来であれば、機密扱い(サルブタモールの基準値オーバーはドーピング違反でなく、あくまで違反が疑われる分析結果という扱い)で処理されるべき今回の件が、どこからか漏洩してしまったことで、誤解を生むニュースヘッドラインや、SNSなどで「フルームドーピング」といったワードが一人歩きしてしまい、最終的には潔白が認められたものの、フルームにとってはとてつもなく大きな試練の日々を過ごすことになってしまったことは本当に気の毒に感じます。

一方、「ツール・ド・フランス」の主催者であるASOに対しても、現状、様々な深読みがなされていますが、当ブログは「レース主催者」としての立ち位置で記事を書いていることから、「主催者の権利」についても少しだけ補足したいと思います。

実は「ツアー・オブ・ジャパン」でも、2017年大会の出場チーム選考の際に、前年度のアジアツアーランキングで出場資格を持つチーム(過去にドーピング違反者を数多く出していたチーム)を、今回のASOと同じロジックで排除した経緯があります。

もちろん、今回のフルームの件とは大きく異なる内容ですが、主催者にとってリスクに成り得る参加選手という意味では共通点があります。

レースを開催するには、本当に多くの方々にご協力をいただき、また、大会を支援いただいている協賛社様や各自治体様の名を汚さぬためにも、様々な意味に於いてレースをクリーンな状態を保つ必要があります。

なにかあった時に大きな代償を支払うのは、当事者である選手やチームだけでなく、レース開催に尽力した多くの関係者にも影響が生じ、状況によっては職を失うひともでてくるかもしれません。

繰り返しになりますが、レースを開催するためには、数年間にも及ぶ関係者たちの大きな努力がベースにあります。

特に、毎年コースが変更される「ツール・ド・フランス」に於いては、スタート地点やフィニッシュ地点などを担当する自治体関係者の努力は想像以上に大きいはずです。

忘れてはならないのは、レースというのは一つの文化であり、プロチームやプロ選手たちはその文化を利用して、その上で経済活動を行っているということです。

決して、全てが彼らの経済活動のために動いているわけではありません。

もちろん、選手やチームあってのレースではありますが、一般的にはそちらの視点のみで物事が語られることが多いので、今回は違った立場と視点があることを敢えてお伝えした次第です。

一先ず、世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス」が無事に開幕することに感謝し、その上で、世界最高峰の戦いを堪能したいと思います。

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