逆輸出現象

10月~11月は国内の自転車関連イベントが数多く開催されました。
来年、日本で7番目のUCIレースとなる予定の「大分市」でのJプロツアーを皮切りに、国内最高峰の「ジャパンカップサイクルロードレース(宇都宮市)」、今年も大きな盛り上がりをみせたお祭りイベントである「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム(さいたま市)」、そして、総合型自転車イベントである「サイクルモードインターナショナル(幕張メッセ)」と、怒涛の3週間が日本列島を一気に駆け抜けました。
そんな中、今年も多くのイベント内で精力的な活動を行っていたのが、ブラッキー中島氏が代表を務める「子供向け自転車教室」の「ウィーラースクール」でした。
日本の自転車界ではすっかりお馴染みになった「ウィーラースクール」ですが、このスクール、元々はベルギーの自転車競技連盟公認の「子供向け自転車スクール」であり、現在日本で展開しているカリキュラムのほか、より競技性の高い内容も数多く用意されています。
最近、本場のプロ選手たちに各国に於ける「若年層への自転車競技への取り組み方」を尋ねる機会が数多くありましたが、そこで皆が口を揃えて言うのが「15歳くらいまでは他のスポーツなどもやらせながらとにかく自転車を楽しませる」という内容でした。
そして、若年世代には「ウィーラースクール」の様なカリキュラムを数多くこなさせ、遊びながら自転車の基本的な操作技術を身体に覚え込ませていくとのことです。
ですので、本場の若年世代の子供たちというのは、いわゆる「速くなるための練習」はさほどしておらず、その時点での基本的な体力や才能でレース(速さ)を競っている状態であり、その後、15歳を過ぎてから本格的な練習やレース活動を開始すると、一気に力をつけていくことになります。
一方日本では、若年世代の子供たちが猛烈な練習をするケースが散見され、この辺りは今後改善していかなければならない要素なのだと感じています。
そんな、本場の育成方法などを研究するなかで、ちょっと面白いエピソードをブラッキー中島氏から聞く機会がありました。それは、大分市でのイベントに参加していた、かつてのジロ・デ・イタリア王者、ダミアーノ・クネゴ選手の言葉でした。
「このスクールはとてもいいね。是非、イタリアでもやってみたい!」
この言葉を聞いた時、ブラッキー中島氏は一瞬「???」となったそうです。たしかにベルギーとイタリアで国は違うとはいえ、本場欧州でのスクールを模範にしつつ「ウィーラースクール」を展開してきたブラッキー中島氏にとっては、クネゴ選手の言葉はとても意外だったに違いありません。
スポーツとしての自転車がまだまだマイナーな日本に於いて、どうやったら興味を持ってもらえるか、どうやったら価値あるものに育てていけるか、そんな風に10年間試行錯誤しながらやってきてことが、いつしか本場とは違ったオリジナリティを生み出し、そして、結果的に「時代の変化の波に晒されている伝統国イタリア」のチャンピオンの目には新鮮なコンテンツとしてうつったのだと思います。
良い部分は本場に学び、しかし、ただ本場のマネをするのではなく、自分たちの独自の発想で新しい形を生み出していく。
「日本版ウィーラースクール」の「逆輸出」現象から学ぶことは数多くあるはずです。


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