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栗村修のワールドツアーへの道

KURIMURA's Blog

未来のロードレース

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「ツアー・オブ・ジャパン」の未来を語る時によく話題に挙がるのが、「やはり本物のロードレースを追求するならばラインレース(スタート地点とゴール地点が異なる場所でワンウェイのコース)を目指すべき」という議論です。

私自身も選手時代はレースを走る側でしたから、よりダイナミックなコースという意味ではラインレースこそが本物のロードレースと信じていましたし、国内では「ツール・ド・北海道」が唯一のラインレースによるステージレースだったことから、同レースに出場して結果を残すことに価値を感じていたりもしました。

しかし、「ツアー・オブ・ジャパン」の仕事に就き、また、国内レースの商業化(たまにこういった考え方を悪と捉える方がいますが、どういった形であれ社会構造に組み込まれていない案件というのはいずれ継続できなくなります…)を考えた場合、ヨーロッパのように自転車ロードレースが文化として根づいている地域ならまだしも、そうではない場所でラインレースを継続可能なスポーツイベントに育て上げるには、相当な無理があるということも日々痛感するようになりました。

現在、UCIの公式レースを開催するためには、一部の例外を除き、基本的に1周10km以上のサーキットコースを用意する必要があります。

これらは地域によっては大して難しい条件にはなりませんが、一方で、都市部などに於いては、この数字を確保できずにレース開催を断念するというケースも過去にあったりもしました。

そんな中、個人的に以前から注目していた、UCIワールドチームが中心となって設立した「Velon(自転車ロードレースの新しいビジネスモデルを考える企業)」が、スポーツマーケティング会社の「インフロント」と共に「ハンマーシリーズ」という、まったく新しい自転車ロードレースの年間シリーズ戦を発表しました。

内容を要約すると、「UCI管轄から外れた独立リーグ(極端な話し国内のJプロツアーと同じ立ち位置)」、「コースはオール周回コースでしかもUCIレギュレーションを下回る10km以下のサーキットあり」、「レース時間はなんと2時間未満」、「エンターテインメント(プロスポーツ)を軸に考えられているので、観客やTV視聴者を優先にレース開催日や時間などが設定されている」とのこと。

これまで、「本場のレースはこうなんだ」と声高に主張していた人たちの完全に裏をいく、むしろ先に書いたように日本の「Jプロツアー」に近いレース構造となっており、このある意味で偽物のロードレース(皮肉です)に、なんと、シーズン中にも関わらず12~13のUCIワールドチームと5~6のUCIプロコンチネンタルチームが出場予定だというのです。

そして、最も画期的なルールとしては、勝敗の対象が「個人」ではなくて「チーム」になるという点です。

これまでの自転車ロードレースは、主要なリザルトが「個人」であるにも関わらず、実態はチームスポーツという、はじめて見たひとにとっては「なんのこっちゃ?」という複雑さがある種大きなネックとなっていました。

今回、この部分に大きくメスを入れてきたことはとても大きなことだと思います。

もちろん、伝統的な「ツール・ド・フランス」の様な自転車ロードレースを否定するつもりはありませんし、やはり「ツール・ド・フランス」は今後も自転車ロードレースの象徴として存在し続けるべきだと思います。

しかし、一方で、なんでもかんでもが「ツール・ド・フランス」や本場のクラシックレースを目指すのはどうもナンセンスだと感じ続けていたので、今回の「Velon」の発表にはとても好感が持てました。

こういった流れは日本の自転車ロードレース界と「ツアー・オブ・ジャパン」にとっては確実に追い風となるので、今後の「ハンマーシリーズ」の動向に注目していきたいと思います。

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