大町美麻ロードレース大会実行委員会
8月30日(日)に、例年はオープンレースが開催されている 『大町美麻ロードレース』 の美しい公道サーキットコースに於いて、『文部科学大臣杯第71回全日本大学対抗選手権自転車競技大会2015ロードレース(通称:インカレロード)』 が開催されました。
インカレロードは大学ロードレース界の最高峰に君臨する歴史あるレースであり、各校ともここでの勝利を目指して1年間の活動の殆どを費やしています。
そんな伝統のレースが開催された旧美麻村(2006年1月に大町市に編入)ですが、長野県の北西部に位置するエリアであり、人口は1,000人強と決して大きくはない、周りを1,000m級の山々に囲まれた地区です。
この美麻地区では、これまで9年間に渡り本格的なロードレースが開催されてきました。
『大町美麻ロードレース』 のコンセプトは 『地域貢献型ロードレースの開催』 であり、ロードレースを開催することが同地区の 『まち興し』 に繋がることが基本概念となっています。
それらを示すように、大会の協賛社などをみてみると、自転車業界というよりかは地域に関連した企業などが数多く名を連ねています。
私自身、ここ数年はずっと 『自転車ロードレースのビジネスモデル』 というものを模索し続けていますが、ロードレースというスポーツが基本的に入場者収入がとれない構造(仮に入場料がとれる仕組みをつくったとしても集金管理をするための設営費や人件費などがかさみ効果的な収益には繋がりにくい…)であったり、現状、テレビの放映権料獲得もかなりハードルが高いことを考えると、やはり 『自治体』 をメインスポンサーとした運営構造を考えるのが最も現実的であることに気付かされます。
一般企業を大会のメインスポンサーとする場合、協賛金額が大きくなればなるほど、大会の露出メディアのランクも高いもの(一般的な概念でいえば地上波のゴールデンタイムが最も価値が高い?)を要求されます。
『卵が先か鶏が先か』 の話になりますが、露出が無ければ大きな協賛金は集められず、また、大きな露出機会を得るには大きなお金が必要になります(テレビ局が自腹でゴールデンの放送枠と制作費を捻出してくれるコンテンツになるにはまだ気が遠くなるほどのハードルを超えなくてはいけません…)。
一方、自治体が主要なスポンサーとなった場合でもやはり高いランクの露出機会があるに越したことはありませんが、ただし、例え露出が少なくても、開催地域に対して一定の 『経済波及効果』 を生み出すことは不可能ではありません。
主だったところでは、『選手や大会関係者の宿泊や食事などに関するお金が地域におちる』、『地域の観光資源や特産品の宣伝や直接的需要に繋がる』、『過疎地であればあるほど難しい“地域を知ってもらう”という宣伝に繋がる(レース開催時以外でのトレーニングや合宿などの誘致に繋げることも可能)』、『地域の活力と雇用を広げ地域で育った若い人が都心部に流れてしまうことを防ぐ』、などなど、考えはじめるとメディア露出以外でも多くのメリットがロードレースを開催することにより地域にもたらされることがわかってきます。
ただし、地域がメインスポンサーとなる場合、その財源をどうするか?という部分が問題になってきます。
有望な観光資源や大きな利益を挙げる企業などを持っている地域であれば、相応の 『観光予算』 などが計上されているはずなのでそれらを使うことが可能となるでしょうが、そうではない地域の場合は色々と工夫をしなくてはいけません。
今回、インカレロードが開催された大町市美麻地区は、決して大きくはない自治体でも10年近くも本格的なロードレースを開催できる、という 『ノウハウ=パッケージ』 を持っています。
更に、大町美麻ロードレースのオーガナイザーは、似たような条件を持つ自治体で 『自転車ロードレースをつかったまち興し』 を考えているところがあれば、喜んでそのノウハウなどを提供する、という意向を持ってくれています。
また、全国の各レース主催者にも、それぞれの開催環境に準じた様々なノウハウが蓄積されているのでしょう。
これらが効果的に一箇所に集約され、そしてしっかりと体系化されていけば、地に足がついた 『自転車ロードレースのビジネスモデル』 が構築されていくはずです。
いつも感じることではありますが、『横のつながり』 の強化がとても大切な要素なのでしょう。