UCI公認レース
『ツアー・オブ・ジャパン』 を形容する時の一つに 『UCI公認国際自転車ロードレース』 という表現方法があります。
その上で、よく、以下のような質問を受けることがあります。
◯ 「UCI公認レースのメリットとはなんですか?」
◯ 「各チームや各選手たちがUCIポイント獲得を目標にしているようですがなぜですか?」
まず、『UCI公認レースのメリット』 ですが、主催者サイドからすると、UCI(国際自転車連合)のお墨付きを得ることで、集客力のある 『有力チーム(選手)』 の出場を確保しやすくなります。
その結果、大会協賛社やメディアなどとの連携もしやすくなり、より好条件下でイベント運営を進められる可能性が高まります。
UCIのレースカテゴリーが上がれば上がるほど、よりハイレベルなチーム(選手)の招聘が担保され、規模的にも経済的にも大きな大会を狙えることになります(もちろんリスクも大きくなります)。
チーム側にとってもステイタスや露出度の高い大会への出場は、チームスポンサーのアピールに繋がり、安定したチーム運営を進める上で重要な選択肢となります。
一方、『各チームや各選手たちがUCIポイントに拘る理由』 についてですが、一般的には以下の様な理由が考えられます。
◯ 各選手の契約条件の改善
(UCIポイントを多く持っていることで所属チームのランキングをアップさせることができる)
◯ 各チームのUCIアジアツアー各レースへの出場権の確保
(アジアツアー年間ランキング上位3チームは1クラス及び2クラスのレースについては優先出場権を得られる)
◯ オリンピックや世界選手権への出場枠確保
(UCIアジアツアーのナショナルランキングに出場枠が付与される)
それでは実際に国内でUCIポイントを獲得できるレースを挙げてみます。
◯ ツアー・オブ・ジャパン(2.1)
・各ステージ順位獲得ポイント=合計352P
・個人総合時間順位獲得ポイント=合計269P
・個人総合時間順位リーダージャージ着用ポイント=合計56P
・合計獲得ポイント=677P
◯ ツール・ド・熊野(2.2)
・各ステージ順位獲得ポイント=合計60P
・個人総合時間順位獲得ポイント=合計125P
・個人総合時間順位リーダージャージ着用ポイント=合計12P
・合計獲得ポイント=197P
◯ 全日本選手権個人タイムトライアル
・合計獲得ポイント=15P
◯ 全日本選手権ロードレース
・合計獲得ポイント=128P
◯ ツール・ド・北海道(2.2)
・各ステージ順位獲得ポイント=合計45P
・個人総合時間順位獲得ポイント=合計125P
・個人総合時間順位リーダージャージ着用ポイント=合計8P
・合計獲得ポイント=178P
◯ ジャパンカップ(1.HC)
・合計獲得ポイント=352P
◯ ツール・ド・おきなわ(1.2)
・合計獲得ポイント=125P
◯ 国内レース総獲得可能UCIポイント
・合計獲得ポイント=1,672P
尚、「ポイント賞」 や 「山岳賞」 などの 「個人総合時間順位以外」 の特別賞についてはUCIポイントは付与されません。
最もUCIポイントを獲得できる機会を提供しているのが 『ツアー・オブ・ジャパン』 であり、1レースで全体の三分の一以上のUCIポイントをカバーしています。
7月25日現在のUCIアジアツアー各ランキングは以下の様になっています。
◯ UCIアジアツアー個人ランキング(2015/7/25)
1位 Mirsamad POURSEYEDIGOLAKHOUR Iran TPT 372P
2位 Hossein ASKARI Iran PKY 301P
3位 Patrick BEVIN NewZealand ART 198P
◯ UCIアジアツアーチームランキング(2015/7/25)
1位 PISHGAMAN GIANT TEAM Iran PKY 678P
2位 TABRIZ PETROCHEMICAL TEAM Iran TPT 601P
3位 ADRIA MOBIL Slovenia ADR 383P
◯ UCIアジアツアーナショナルランキング(2015/7/25)
1位 IRAN 1,337P
2位 JAPAN 446P
3位 KAZAKHSTAN 383P
4位 KOREA 276P
世界選手権ロードレースエリート男子の出走枠についてですが、8月15日時点の上記ナショナルランキングで、
・1位の国は「6人出走」
・2~4位の国は「3人出走」
となっています。
要するに、世界選手権ロードレースに出場するためには、アジアツアーランキングで4位以内に入っている必要があります(ワールドツアーの規定は除く)。
この様にみていくと、『UCI公認レース』 と 『UCI登録チーム』、そして 『そこに所属している選手たち』、の微妙な相互関係がなんとなくみえてきます。
但し、選手たちひとりひとりでみてみると、個人ポイントを多く獲得しても、それが即契約金にイコールで反映されるわけではないですし、世界選手権の出場枠獲得に大きく貢献したチームや選手がイコール世界選手権代表に選ばれるわけでもありません。
また、チームランキングも3位以内に入れば直接的メリットを得られますが、4位以下であれば、イコール各レースへの出場権を獲得というわけにはいきません。
ということで、『UCI公認レース』 が生み出すメリットというのは、結果論的には間違いなく存在しているものの、一部については実態が追い付いていない、若干、形骸化してしまっているものもあるといえます。
自転車ロードレース界全体の制度というものが、まだまだ 『後付け』 的な矛盾を多く含んでしまっていることを実感するとともに、はじめて観る人でもすんなりと 『制度』 と 『メリット』 を理解できる制度づくりが必要なのだと強く感じます。