お金のこと
ツアー・オブ・ジャパンの仕事に就くようになり、レース開催に関するお金の流れについて日々多くのことを学んでおります。
かつて選手だった若かりし頃というのは 「レースがあるのは当たり前」 と思っており、「何故レースが存在しているのか?」、「誰がどの様な取り組みをした結果レースが成り立っているのか?」 など、根本的なことを考える機会は殆どありませんでした。
それは、先輩選手や監督なども含めて 「レースがあることを有難く思いなさい」 的な教えを乞う人が周りにいなかったのも一つの要因だったと思います。
むしろ、「ここがおかしい」、「ここが不便だ」 などの不平不満を口にしている人が自分も含めて殆どだった様な気がします…
今更ながら、全然わかっていなかったなあと深く反省しております。
さて、改めて自転車ロードレースというスポーツと冷静に向き合ってみると、このスポーツのビジネスモデルが非常に未成熟なことに気付かされます。
通常、殆どのプロスポーツというのは、多かれ少なかれ 「入場者収入」 というものを回収でき、スポーツによってはそれらがイベント収入の大変を占めていることすらあります。
そういったスポーツ関係者からみれば 「入場者収入がなくてどうやって成り立っているの?」 と不思議に感じたりもすることでしょう。
ちなみに、世界のプロの自転車レースに関しては、以下の様な収益機会が存在しています。
1. テレビなどの放映権料
2. スポンサー収入
3. 自治体などからのレース誘致料
ツール・ド・フランスなどのビッグレースに関しては 「1」 の放映権料が全体の収入の半分以上を占めているという情報もあり、自転車ロードレースのビジネスモデルを考えた場合とても重要な要素だということがわかります。
また、「2」 のスポンサー収入に関しても 「1」 のテレビ放映と強い関連性があり、強力なメディア媒体での露出がないスポーツイベントに多くのスポンサーを呼びこむのは決して簡単ではありません。
ちなみに、日本国内のレースで 「放映権料」 を獲得できているレースは実質的にゼロであり、殆どの主催者はテレビ局に対して千万円単位の金額を支払っている状況にあります。
入場者収入がないスポーツで、更に国内では放映権料も獲得できない(獲得できないどころか大金を払っている)…
いったいどうやって開催しているの???
ご存知の方も多いかとは思いますが、日本の自転車関連のイベントの多くは競輪(JKA)の補助金に依存して生き延びてきました。
最盛期には年間の売り上げが約2兆円に達していた競輪界ですが、現在はその額が4分の1近くまで縮小しており、その結果当然ではありますが補助金の交付環境も一層厳しいものになってきています。
「こんな逆風だらけの環境でよく開催を続けているな」 というのが、私自身がレースに関わるようになって感じた最初の感想でした…
恐らく、今後早い段階で根本的な考え方や仕組みを創り直さなければ、最悪、国内から全てのUCIレースが消滅する日が来てしまうもしれません。
そもそも、地上波のテレビメディアの影響力自体が急速に失われている状況の中で、従来のビジネスモデル(大企業スポンサー↔大手広告代理店↔在京キー局での放映)を引きずっていては恐らく何も生み出すことはできないでしょう。
むしろ、一般的なテレビメディアを使ったビジネスモデルは終焉したものと割りきって、ベンチャースポーツならではの新手法を生み出す努力を続ける必要があるはずです。
多くの変化に翻弄されている現状ではありますが、一方で 「価値のあるものに人とお金は集まる」 という大原則にはなんら変化はありません。
目の前のお金を求めるのでなく、価値あるものへの成長を追求していきたいと思います。